レーザー治療でワキガの手術をしたのですが、効果がない。
2017.01.20
わきが・多汗症
患者様からのお悩み
※患者様からのご相談
当院にもレーザーで治療はできないかとお問合せを頂くこともございます。「傷を作らない」という点で、患者様にとってメリットが大きいように一見感じられるこの治療ですが、一時的に汗腺を焼いていく治療であるため、手術のような永久的な効果は見込むことは難しいと言われています。
本来、手術での治療の方が効果は高いですが、広告などでは「傷ができないのに、永久的な効果」など謳っていることも多く、患者様も魅力に感じられるようです。 こちらの記事では、ワキガの原因から、レーザー治療の本当の効果やカラクリまで私、大阪院院長の田川が詳しく解説させて頂きます。
ワキガの仕組み
ワキの構造
それでは、まずワキガの仕組みからご説明しますね。 下2つの図をご覧ください。 図1の脇の下の毛が生えてくる範囲には、2種類の汗腺が存在しています。
1つめが「アポクリン腺」という汗腺です。 このアポクリン腺は脂肪層というところにあり、毛と繋がっています(図2)
2つめが「エクリン腺」という汗腺です。 エクリン腺はアポクリン腺よりも浅い皮膚の真皮にあり、直接皮膚と繋がっています。
ワキガの方は、もともとアポクリン腺の数が多い方です。 生まれつき多い方もいれば、思春期までの環境で増えてしまったという方もいます。 思春期以降はアポクリン腺の数が増えたりすることはないようです。 ワキガのにおいの原因は、アポクリン腺から分泌される分泌液が、毛穴を通って皮膚に出てくる際、雑菌などと混じり合うことで嫌なにおいを発生させることにあります。
多汗症の方は、エクリン腺の数が多い方です。 こちらも生まれつきの場合と、環境により増えた場合とありますが個数に個人差があります。 誰でも汗はかきますが、特に多く汗が出るという方はエクリン腺が多く「多汗症」と言われます。
ワキガを改善する為には
ワキガを改善する為には、匂いや汗の原因である「アポクリン腺」「エクリン腺」の二つの汗腺を取り除いていく必要があります。 この汗腺は、思春期以降であれば、一度根本的に取り除いてしまえば再発する可能性はありません。
ワキガの手術の種類と効果
① 剪除法(せんじょほう)
ワキガの根本治療です。一番効果が高い方法であり、その他の方法はこれに勝ることはありません。簡単に説明していきます。 ① 脇のシワの腺に沿って切開していきます。
② 切開した皮膚を裏返しにし、医師は目で見ながらアポクリン腺とエクリン腺を除去していきます。目で見て行うことで取り残しを防ぐことができます。
③ 汗腺を取り除ききったら、傷口を縫っていきます。
④ 最後にしっかりと圧迫していきます。
【剪除法のメリット】
・きちんと目視下にて手術を行うため、汗腺を取り残す心配がない
・一度取り除いた汗腺は再発しないため、効果は永久的
・傷跡は脇のシワに沿っていてほとんど目立たなくなる
【剪除法のデメリット】
・永久的な効果を得るための手術である為術後固定が必要である(3日程度)
《当院で行った剪除法手術の傷口の経過》
「傷」や「黒ずみ」などの心配を大げさに語るような広告もよく見かけますが、実際は上記写真のようにきれいに改善します。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
⇒脇の傷口が気になりますが、傷は一生残るんですか?
⇒手術後の脇の黒ずみが気になります。これは治るんですか。
② 吸引法(きゅういんほう)
吸引法も様々な方法があるようです。 超音波を使ったり、新しいものも出ているようですが、実は効果は高くはありません。
手術方法から説明していきます。
皮膚に5ミリほどの小さな穴を空け、そこから汗腺を吸引します。 エクリン腺は真皮層にくっついており、吸引では取れないため、多汗症の方には効果のない方法です。アポクリン腺は少しは取ることはできますが、一部は真皮にもくっついているため、3割程度吸引できればいい方でしょう。剪除法と違い、どこに汗腺があるか目で見ながら吸引できるわけではないので、手探りで行うような形です。
【吸引法のメリット】
・手術時の傷が小さい(傷は小さくても大きくてもきれいに治る為、結果的には同じです)
・ダウンタイムが少ない
【吸引法のデメリット】
・お悩みである匂いは30%程度しか改善されないので満足しないこともある(というより満足度に繋がっていないケースの方が多いように思えます)
・汗は改善することができない
③ レーザーなどの切らない手術
最近、広告などでも大きく宣伝されており、目にした方も多いと思います。
全く切らずに皮膚の上からレーザーを当てる方法です。 理想の手術のように聞こえますが、効果は少ないのが現状です。
ワキに局所麻酔を打ちます。 そして、レーザーを照射していきます。
特に固定などはありません。
【メリット】
・短時間で終わるため負担が少ない
・表面に傷は一切作らない
【デメリット】
・一時的に汗腺を表面からレーザーで抑えているが永久的ではないため再発が多い
・レーザーでは、根本治療ではないため症状が強い方には効果がない
レーザーを勧めるクリニックが多い理由
上記で説明してきたように、ワキガの根本治療は「剪除法」が一番の方法であり、効果が高いのは言うまでもなく、再発などの心配もありません。しかし、広告などでは「切らない治療法」「レーザー治療」などを勧めるものがとても多く蔓延しています。
《傷ができないということをメリットにし、集客しやすい》
美容外科でワキガの手術を希望される方、特に女性の方はイメージで「脇に傷ができたらどうしよう」ということを思われるかと思います。その患者様のご不安に一見お答えしているように見えますよね。 実は剪除法も時間と共に傷はほとんど目立たなくなるので、一時的な心配ではあるのですが、傷ができないと言われるとより安心に感じるのが患者様の本音かと思います。
《レーザー治療は手術よりクリニック側の負担が少ない》
きちんと剪除法で手術を行う場合、最低でも2時間程度時間を要します。
手術室もその間他の手術で使うこともできませんし、医師もそれだけの時間拘束されます。
また、目視下にて丁寧に手術を行わなくてはならず、医師にとっても労力がいります。
しかし、レーザー治療の場合、1時間程度で行うことができ手術の半分の時間で終わることができます。 これは患者様にとってのメリットのように見えますが、クリニックにとってもメリットです。 その残りの1時間で他の手術をすれば、更に利益を得ることができるからです。
レーザーを当てるだけなので、手術するよりも医師や看護師の負担も少なくて済みます。
《手術よりも利益が出る》
「傷ができない」「ダウンタイムがない」などの患者様にとっての多くのメリットを謳うことで、手術代金を高額に設定していることが多いようです。
場合によっては、切開法(剪除法)の倍ほどの価格でレーザー治療を行うクリニックも多いようです。 患者様も、「傷ができないなら仕方ない」「ダウンタイムがないのなら」と高額でも手を出してしまうケースが多いようです。
しかし、金額も高額で効果が少ない方法を受けるメリットはあるのでしょうか? 失敗しないためのポイントを次に解説していきます。
失敗しないためのアドバイス
ここまでで説明してきたとおり、レーザー治療のカラクリをお分かりいただけたかと思います。最後にポイントをまとめていきましょう。
《傷ができない、ダウンタイムが少ないなどの目先のメリットに惑わされない》
いくら傷ができなくても、お悩みであるにおいや汗の改善がなければ、高いお金を払い、レーザー治療を受ける意味はありませんよね。 こちらでも何度も説明しているように、ワキガの根本治療にはきちんと汗腺を取り除く必要があります。 お悩みを改善するためには、根本的に取り除くというのが一番効果が発揮できるのです。 剪除法でも傷はきれいに治ります。 目先のメリットに惑わされないようにしましょう。
《きちんとお悩みを改善してくれるクリニックを選ぶ》
もちろん、レーザー治療を行っているクリニックが全て悪いというわけではありません。
カウンセリングできちんと事前に、その治療における効果、メリット、デメリット、その患者様に適している手術であるのかなどを親身になって相談に乗ってくれるクリニックであれば安心ですよね。
重度の症状であるにも関わらず、傷跡のメリットだけを優先しレーザー治療をしても効果を感じることはできません。ご自身のお悩みがどの程度であるのかもきちんとお伝えされることをお勧めします。
たまに、レーザー治療を受けた後に効果を実感できないと術後相談したところ、【食生活を改善するべき】と言われてしまったとご相談に来られる方がいらっしゃいます。 インターネット上でもそのような書き込みを目にしました。
しかし、手術で根本的な治療ができていれば、多少の食べ物の偏りなどで再発したりすることはありません。効果を実感できないのは、食事のせいではなく、その治療方法が効果の少ない方法であったと考えた方がよいでしょう。
そのような手軽な治療にもデメリットがあるということを知って頂いた上で治療を選択されることをお勧めしたいと思います。
この記事で取り上げているわきがの施術について、
詳しく知りたい方は以下をご覧ください。
【わきがの施術について(水の森美容外科 公式サイトへ)】
2017.01.20
わきが・多汗症