ゴルゴ線(中顔面)の治療をしたが効果が無かった。
2017.10.02
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老けた印象を与えてしまう女性のお悩みで多いのが、頬の「ゴルゴ線」。正式にはミッドチークラインとも呼ばれており、年齢が上がるにつれてゴルゴ線がある人の割合が高くなります。改善する方法に目の下のたるみ取りやヒアルロン酸による治療法がありますが、効果がなかったという患者様の声も多いようです。当記事では、ゴルゴ線ができてしまう理由や治療の効果について解説していきます。
患者様からのお悩み
以前ヒアルロン酸を入れて貰って逆にみみずばれになった事があったので、それ以来ヒアルロン酸を入れようとは思わなくなりましたが、やはり、気になる・・・。ゴルゴ線。いつも眉間にボトックスを入れて頂いてる美容外科の先生が「このゴルゴ線はヒアルロン酸でふっくらさせれば目立たなくなりますよ。」と言ってくださいます。
私がヒアルロン酸を入れたのはもう7年ぐらい前です。それから技術も進歩してる事と思います。思い切って先生にお任せしようと思っているのですが、イマイチ踏み切れません。どうしたら良いのでしょうか。
※患者様からのご相談より
ゴルゴ線の診断と主な原因・治療効果
目の下から頬にかけてのくぼみを中顔面もしくはミッドチークラインと呼びます。
一般的には漫画「ゴルゴ13」の主人公に由来する、ゴルゴ線といったほうが馴染みがあるかもしれませんね。
ゴルゴ線の原因ですが、頬の筋肉からの靭帯が皮膚を下に引っ張るため、皮膚にくぼみが生じることで形成されます。
さらに年齢とともに皮膚や筋肉が緩んだり、あるいは脂肪が減ってやせると、下垂して徐々に深くなってくるため、老け顔に見えてしまうとお悩みの方も多い部位です。
ゴルゴ線の治療には、ヒアルロン酸注入や脂肪注入(ナチュラルファイバー)が効果的です。両者ともくぼんだ部分に注入し、ボリュームをつけて膨らませることでくぼみを消す治療法です。特にヒアルロン酸は手軽でダウンタイムも少なく、注入直後から効果が実感できるため非常にお奨めです。
※さいとう・プロダクション公式サイトより引用
治療困難なケース、ヒアルロン酸注入のみでは不完全なケース
一口にゴルゴ線といっても中には治療が難しいものや、正確な診断を要するケースがあるため、私は術前のカウンセリングの中で慎重に診察するよう日々心がけています。
ここで、ゴルゴ線の治療において治療困難なパターン、あるいはヒアルロン酸注入のみでは不完全で他の治療の併用が必要なパターンをご紹介します。
1、子供の頃からあるゴルゴ線
一般的にゴルゴ線は加齢とともに形成され深くなっていきます。
しかし、中には幼少時からゴルゴ線が存在している方がいます。このタイプの患者様は、若い頃はまだ軽度でも、年齢と共に徐々に深くなり20代から30代と比較的早く目立ってくる方が多い印象があります。
ただし、子供の頃からのゴルゴ線は難治性です。このようなくぼみだと、より強固な靭帯に引っ張り込まれているため、完全に消すことは困難な場合があります。それでも無理して沢山の量を注入すると、当然パンパンに膨らんでしまいますし、例えそのように注入してもくぼみは残ってしまうでしょう。
30代後半の患者様で、他院で繰り返しゴルゴ線のヒアルロン酸治療を行ったものの、思うような効果が得られませんでした。数院をはしごして「もっともっと」と注入しては、今度は膨らみ過ぎてしまったためヒアルロン酸溶解注射を打った、という治療歴がありました。また、糸のリフトアップも勧められ手術を受けたこともあったようですが、こちらもあまり効果が無かったそうです。「何をすれば良くなるのか、、、」と非常にお困りでした。
そこで、カウンセリングの際に患者様に詳しくお話を伺うと、「子供の頃からずっとゴルゴ線はあった」、「あんまり気にしてなかったのに、年齢とともに深くなってきたので目立ってきた」と仰ってました。
このような場合100%の改善は難しいのが現状で、私も非常に口惜しい思いをすることもありますが、消えにくい理由を正しくご理解頂き、60〜80%程の改善度である旨などを術前にお伝えしておくべきでしょう。そうすれば、今回の患者様のように「どうすれば、、、」と路頭に迷ってしまったり、不要な治療を受けることは防ぐことができるのではないかと思います。
2、シミとゴルゴ線が重なっている
また別のパターンもあります。ある50代の患者様では、ゴルゴ線のくぼんで影になる位置に、肝斑というシミが重なっていました。ところが患者様自身はシミがあるとは認識しておらず、てっきりゴルゴ線を消すことで解消できると思われていたそうです。頬は肝斑や老人性色素斑といったシミができやすい部位です。しかし、意外と医師側もゴルゴ線とシミが同化していると、見落としやすいポイントになります。当然ゴルゴ線を治療してもシミは残るので、「ヒアルロン酸で良くなるって言ったのに、、、」とご満足いただけない結果となってしまうわけです。
3、目の下のたるみがある場合
眼球は頭蓋骨にある眼窩(がんか)というくぼみに収まっており、眼球と骨の隙間には眼窩脂肪があります。眼球は奥の方ではこの脂肪で覆われた状態で存在しています。しかし、年齢と共に重力の影響で眼窩脂肪がずり落ちてきて、目の下で前方に突出して目の下がふくらみを形成します。これがいわゆる目の下のたるみです。
《眼窩脂肪が目の下に落ちて、ふくらみが出た様子》
さらに多くの場合ではふくらみの下がくぼんで影になり、くまのように見える部分が生じます。そして、このくぼみが目の下から頬のゴルゴ線へ繋がっているケースが比較的多くみられます。一見すると「目の下から頬まで全てゴルゴ線」という認識になりやすいのですが、ゴルゴ線のヒアルロン酸注入では目の下のたるみやくぼみは消えません。この場合の目の下のたるみ治療は、ハムラー法が良い適応になります。ゴルゴ線なのか、目の下のたるみやくぼみなのか、はたまた両方あるのか。症状を見極め、それぞれのパターンに最適な治療を選択することが大切です。
《代表的な3つのパターン》
4、目の下の皮膚のたるみが強い
加齢と共に皮膚の弾力が失われ、皮膚が伸びて余ってきてしまいます。また皮下の眼輪筋という筋肉も加齢で緩みます。すると皮膚がシワシワとたるんでくるのですが、目の下の皮膚のたるみが強いと、ゴルゴ線上部皮膚がたわんで下垂し、ゴルゴ線がより深くなります。この状態の方もヒアルロン酸注入で完全にゴルゴ線を消すことは困難で、過剰に注入して仮にゴルゴ線は消えたとしても、不自然に膨れ上がってしまうでしょう。
このようなケースにおいて、ヒアルロン酸注入で不完全ならば目の下の余った皮膚を切除する筋皮弁法の併用をお奨めします。また、皮膚が余ることによるたるみと前述の眼窩脂肪目の下のふくらみは共存していることが多いため、この場合には、眼窩脂肪の処理と筋皮弁法を同時に行うことができるハムラ法がより適しています。
また、ヒアルロン酸注入を行う際にも注入方法によって効果に差が出ることがあるため、医師には正しい知識が必要です。
ここで、ヒアルロン酸注入について説明します。
ヒアルロン酸注入のイメージ
一口にヒアルロン酸注入といっても、その方法次第で治療効果は大きく差が出ます。
ここで、ヒアルロン酸による治療の理論的な話になりますが、皆さんのヒアルロン酸注入のイメージはどの様なものでしょうか。
多くの方のイメージは、ヒアルロン酸をシワのくぼみの形に合わせてピッタリ埋める、というものだと思います。しかし実際は、ヒアルロン酸というジェル状の物質を、シワの凸凹に合わせて、注射器を使って人の手で絶妙にピッタリ埋めるなんてことは不可能です。少しでも平らなところを超えると凸凹に盛り上がってしまう原因となります。ではどの様に注入するのかというと、シワをピッタリ埋めるのではなく、シワのもっと深いところにしっかりした量のヒアルロン酸を打ち、ボリュームをつけます。そして、深いところからヒアルロン酸のボリュームで全体的にふっくら持ち上げてシワを浅くしていくのです。ヒアルロン酸注入にはボリューム形成という治療の概念があります。
ヒアルロン酸の注入方法の問題で効果が無い
以前に他院でヒアルロン酸注入を行なったがあまり効果が無く、さらには凸凹になってしまったというケースがあります。その多くが、ヒアルロン酸を浅い層に注入している場合です。
前述の通り、ヒアルロン酸注入の肝はシワの深い層にしっかりとした量を注入して、ボリュームで持ち上げることです。しかし、シワをピッタリ埋めようと浅い層に注入しても平らに埋めることは実際は不可能で、すぐに凸凹になってしまいます。また、凸凹になることを恐れて少しだけ注入しても、肝心の効果が得られないということになります。
次からは、ゴルゴ線の解消として効果の出にくい治療法について説明していきます。
ゴルゴ線に対して効果の出にくい治療法4つ
《リフトアップ系の手術》
ゴルゴ線は加齢とともに脂肪が減少してボリュームダウンし、さらに皮膚がたるんで下垂することで深くなるため、理論的にはたるんだ皮膚を持ち上げれば改善するのでは無いかと思いがちです。しかし、ゴルゴ線は解剖学的にフェイスリフトや糸のリフトなどリフトアップの手術では改善が難しい部位です。
下記に、各施術項目の手術方法・効果・ゴルゴ線治療に適しているかどうかを細かくご説明させていただきます。
フェイスリフト
フェイスリフトは頬や顎などフェイスラインのたるみに対しては非常に高い効果が得られます。なぜなら、皮膚だけを引き上げるのではなく、皮膚の深いところにあるSMAS(スマス)という硬い筋膜を同時に引き上げるからです。皮膚だけを引き上げたとしても、皮膚には弾力があり伸びてしまうので、効果が弱かったり戻ってしまう可能性があります。そして、ゴルゴ線を含め解剖学的にSMASのような一緒に引き上げることができる筋膜が存在しない部位には、手術の効果は乏しいといえます。
糸のリフト
糸のリフトアップは手軽でダウンタイムは少ないですが、柔らかい皮下組織に糸をなんとなく引っ掛けて引っ張るという原理のため、効果が弱い場合があります。
また持続は一般的には3ヶ月程度と短いため、仮に糸を入れて一時的に多少良くなったからといって、その後の将来的なたるみを予防してくれる訳ではありません。まして糸のリフトアップを数ヶ月などという短いスパンで永久的に繰り返すのは、現実的には難しいでしょう。
その点、ゴルゴ線にはボリューム形成を目的としたヒアルロン酸の方が効果的であり、繰り返しの注入が手軽に出来る面でもより適しています。
金の糸
金の糸の効果とは、皮下に格子状に金を埋め込むことにより、金の糸の周囲に真皮の線維芽細胞活性化によるコラーゲン線維産生促進を起こし、肌のハリを増したり、小じわを改善させたりするという原理です。その他の糸の手術と違いたるみをリフトアップさせるという理屈ではありません。
この効果は可能性としてはありえると思いますが、肌質改善の効果としては、言われてみれば何となく…といったぐらいだと思います。
ゴルゴ線のくぼみをふっくらと改善させるほどのボリューム形成の効果や、たるんだ皮膚を持ち上げるほどのリフトアップの効果はほとんどみられないといっても良いでしょう。
また、金の糸の副作用として、アレルギー反応や異物反応、肉芽腫形成などがあり、いったん体内へ入れた金の糸はなかなか取り出せないため、あえて高いリスクを犯してまでお勧めできるような手術ではありません。
再生医療
美容外科領域で再生医療というと、PRP(多血小板血漿)やFGF(線維芽細胞増殖因子)を注入する治療法です。コラーゲンやエラスチンなどの物質を増殖させて皮膚や皮下組織にハリやボリュームを出すという原理です。この治療法はしっかり効果が得られた場合には持続性の面ではメリットです。デメリットは、速攻性が無く効果が出るまで時間がかかるところにあります。また、効果に個人差があり将来どのくらい膨らむか微調節が難しいため、効果に乏しかったり、逆に膨らみすぎてしまうこともあります。そして、もし膨らみ過ぎてしまっても修正は非常に困難です。このようにPRPやFGFは不確定要素が多い治療法であり、あまりお勧めとはと言えません。
それに対してヒアルロン酸注入は微調節が容易で、注入後はすぐに効果が出ます。万が一修正となった場合、ヒアルロン酸溶解注射で溶かして簡単にリセットできます。また、数回注入することで蓄積して長期に効果が持続することも期待できるため、ゴルゴ線の治療には多大なメリットがあることがお分かり頂けるかと思います。
⇒再生医療(PRP治療、FGF治療)は本当に効果がある治療なの?
【まとめ】
一口にゴルゴ線といっても、患者様の状態によって治療効果に差が出たり、他の症状の合併によりそちらを治さないと不完全である場合があります。
また、ゴルゴ線の治療法は多岐にわたりますが、効果が出るものばかりではありません。今までにゴルゴ線の治療で効果が無かったという経験をお持ちの方は、きっと何かしらの原因があるはずです。
そのような方々にもこの記事を参考にして頂ければ幸いです。
2017.10.02
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